2型糖尿病抑制効果
オーストラリアで最近行われた研究により、2型糖尿病患者が毎日ひとつかみのくるみを食べると、心臓を守るのに重要な多価不飽和脂肪酸(オメガ3など)の推奨摂取量を達成するのに役立つということが判明しました。この研究結果はJournal of the American Dietetic Association(JADA)2005年7月号に発表されています。
国際糖尿病センターで栄養保健専門教育ディレクターを務めたことのあるマリオン・J・フランツ(理学修士、登録栄養士、公認栄養士、認定糖尿病指導者)は、この研究について「2型糖尿病患者にとって、適正な種類の脂肪をバランスよく摂るのは重要だが難しい。くるみを取り入れることで栄養目標の達成が容易になったということは、糖尿病患者および栄養勧告を出す臨床家や糖尿病指導者にとって有益で役立つ情報だ」とコメントしました。
以上の研究結果は、米国糖尿病協会(ADA)の雑誌DiabetesCareの2004年12月号に発表された研究から発展したものです。この研究では、2型糖尿病患者がくるみを含むホールフード食を摂るとLDL(悪玉)コレステロールを10パーセントも減少させられることを示しています。
筆頭研究者のリンダ・タプセル博士(PhD、認定実践栄養士、オーストラリアのウーロンゴン大学にある国立機能性食品センターオブエクセレンス所長)は「今回の試験は、多価不飽和脂肪酸が糖尿病管理に与える影響を調べた早期の試験のひとつである。くるみを利用すれば、オメガ3多価不飽和脂肪酸を簡単かつ手軽に食事に取り入れることができる。くるみは特に糖尿病患者にとって重要である。なぜならくるみは糖尿病患者の食事管理に不可欠な要素である間食に利用できる手軽な食品だからである」と言っています。
タプセル博士によれば、くるみを含む食事は初期の2型糖尿病と関連して生じるインスリン抵抗性(血流中からヒト細胞内へのブドウ糖吸収が阻害される)の問題に体が対処するのを助けることができる、ということです。
これらの知見は重要です。米国糖尿病協会によれば、糖尿病患者の65パーセント以上が心疾患か脳卒中で死亡しています。米国では人口の6.3パーセントに当たる1,820万人が糖尿病に罹患しており、そのほとんどは2型糖尿病です。世界保健機関(WHO)の報告によれば、世界全体で糖尿病患者は1億7,100万人を超えており、この数は2030年までに2倍になると見込まれています。
心疾患リスクを抑制
くるみが心疾患リスクの抑制に重大な役割を果たすことを示す研究は増え続けています。心臓に対するくるみの効果としては、コレステロール低下、炎症抑制、動脈機能改善などがあります。
ペンシルベニア州立大学の著名な栄養学教授でこの研究の筆頭研究者であるペニー・クリス=エサートン博士(PhD)は「我々の研究で新たに得られた重要な知見は、くるみを多く取り入れた食事は冠動脈性心疾患の複数のリスク因子に有益に作用するので、心臓血管系のリスク抑制において単独のリスク因子を対象とするより大きな効果をもたらす可能性があるということである」と述べています。
オメガ3脂肪酸を摂ろうとする場合、サケなどの魚に目を向ける人が多いですが、クリス=エサートン博士は次のように述べています。「くるみに含まれるオメガ3脂肪酸は海洋性供給源のオメガ3脂肪酸と同じものに変換され、炎症に対して同様の効果を示した。炎症を抑制すれば、動脈硬化の進行、すなわち動脈内のプラークの形成と蓄積が抑制できる」。
2004年3月にバルセロナ大学で行われた臨床試験では、地中海食の一価不飽和脂肪をくるみで代替すると内皮機能(血液要求量が増加したとき要求を満たすために動脈が弛緩する弾性特性)が改善もしくは回復することが判明しました。この研究では、アテローム性動脈硬化症(一般に「動脈硬化」と呼ばれる)との関連が認められている細胞接着分子がくるみにより抑制されることも判明しています。この二重の効果により、循環系の機能が向上し、心疾患予防につながるのです。研究者らによれば、心臓血管系に対するそのような効果を示すホールフードはくるみが初めてということです。この研究はCirculation: Journal of the American Heart Association(2004年3-4月号)に発表されています。
脳卒中にも絶大な抑制効果が
アルファリノレン(α-リノレン)酸食が血管機能を改善させることを示したペンシルベニア州立大学の研究が、サンフランシスコで開催された米国心臓協会の第5回アテローム動脈硬化症、血栓症、血管生物学に関する年次会議(2004年5月)で報告されました。筆頭著者のシーラ・G・ウェスト博士(PhD)は「我々の得た研究結果から、くるみに含まれる特殊な脂肪酸が動脈の機能を改善し、弛緩も良好になるということが示唆される」と話しています。また、1995年にStrokeに発表されたサンフランシスコ大学の研究では、オメガ3により脳卒中の発生率が低下することが判明しています。
日本人の食生活とのコラボレートで健康効果アップ
カリフォルニアのローマリンダ大学が1993年に臨床試験を行い、くるみを取り入れた食事管理を行った場合、当時米国心臓協会が推奨していた「ステップワン食」と比べて「悪玉」のLDLコレステロールと心疾患リスクが有意に抑制されたことを初めて明らかにしました。ピアレビュー付の研究レビュー、専門文書の作成、科学会議の運営を行う非営利独立組織のライフサイエンス研究所(LSRO)が2002年にレビューを行った5件のくるみに関する研究でもこの知見が確認され、くるみ食のほうが健康的な地中海食より効果が高いことも証明されました。また2002年に発表された九州大学の臨床試験は、健康的なアジア式の食事にくるみを加えるとさらに健康効果が高くなることを示しています。
抗酸化物質:病気と闘う最前線
2004年6月、農務省の行った食品由来抗酸化物質に関する研究で、くるみには抗酸化物質が高濃度に含まれることが判明したと報告されました。抗酸化物質は、癌や心疾患、糖尿病などの生命にかかわる疾患や、関節炎、骨粗鬆症、アルツハイマー病などの身体機能を低下させる疾患の予防を助けます。抗酸化物質のレベルを測定する方法には活性酸素吸収能(ORAC)や血漿鉄還元能(FRAP)などがありますが、いずれの方法でもくるみは上位にランクされています。
前立腺癌や肺癌と戦うガンマトコフェロール(ビタミンE)
Proceedings of the National Academy of Sciences(2004年12月号)に発表されたパーデュ大学の研究によれば、くるみなど一部の植物の種子に含まれる形のビタミンEは前立腺や肺の癌細胞の増殖を休止させる可能性があると示しています。
「くるみにはガンマトコフェロール型ビタミンEが大量に含まれる」と、ペンシルベニア州立大学栄養学助教授のテリー・ハートマン博士(PhD)は語っています。「ビタミンEの主要な型であるガンマトコフェロールとアルファトコフェロールの相互作用についてイーストテネシー州立大学で行われた研究で、ガンマトコフェロールがアルファトコフェロールの細胞吸収を促進させることが判明していることを踏まえると、これは非常に興味深いことである」(ガオら、Nutrition Journal, 1:2, October 2002)との記述もあります。
くるみと体重管理
オーストラリアで行われた最新の研究で、健康効果を得るためにくるみを食べても体重増加という代償は不要であることが改めて確認されました。くるみに関する多数の研究で食事中の他の脂肪をくるみで代替した場合、被験者の体重が増加しなかったことに研究者らは着目しています。くるみのほうが被験者から報告される満足度が高く、食事法を守るのが簡単だと言う被験者も多数いました。2001年10月にInternational Journal of Obesityに発表されたマクマナスらの研究でも同じ反応が観察されています。この研究では、脂肪の量を中等度とした体重減量食(ピーナッツやくるみなどのナッツ類を含む)を摂取する人は減量効果が改善し、従来推奨されてきた低脂肪食を摂取する人と比べて減量効果の持続期間も長くなると結論されました。
食品医薬品局はくるみのヘルスクレーム(健康強調表示)を許可
2004年3月、食品医薬品局は政府としてこれまでで最も強力にくるみを支持する内容の画期的決定を下しました。そこでは「研究によれば、低飽和脂肪・低コレステロール食の一部として1日1.5オンス(約42g)のくるみを摂取し、摂取熱量を増加させなければ、冠動脈性心疾患のリスクが抑制できるということが裏付けられるが、断定はできない。脂肪含有量については栄養情報参照」と明言されています。この食品医薬品局の決定は、心臓の健康によい食事の一環としてくるみを摂取した場合の効果を証明する世界各国の科学的研究を強調したカリフォルニアくるみ協会の請願に応えたものでした。集積したエビデンスによると、こうした心臓の健康効果をもたらすのはくるみの栄養組成であることが示唆されます。
コレステロール値を最適に保つ
この数十年間、米国では飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を不健康なほど大量に含む加工食品の摂取量が増え、食事に大きな変化が生じています。その結果、必須脂肪酸(EFA)の健康的なバランスが損なわれているといわれています。至適な健康状態のためには、2グループの必須脂肪酸(n-6系=オメガ6脂肪酸とn-3系=オメガ3脂肪酸)の比率が4 : 1 を超えないようにするのが理想的ですが、米国人の平均摂取比率は20:1を超える危険な数値となっています。遺伝学・栄養学・保健センター所長で『オメガダイエット』の著者でもあるアルテミス・P・シモポロス医学博士は「くるみはn-6 系脂肪酸とn-3系脂肪酸の比率が4 : 1 という、完璧にバランスのとれたユニークな食品である。4 : 1 という比率は、突然死のリスクを抑制することがリヨン心臓試験で明らかにされている」と言っています。シモポロス博士によれば、n-3系脂肪酸は血中LDL(悪玉)コレステロール値を低下させ、HDL(善玉)コレステロール値を維持または上昇させる、ということです。
n-3系脂肪酸は、血圧、動脈炎症、血小板粘着を抑制し、血小板の凝集とプラーク形成を発生しにくくします。プラーク形成は、プラークの蓄積、動脈の破裂や塞栓につながるおそれがあります。必須脂肪酸、中でもn-3 系脂肪酸には、不整脈や心停止を抑制する働きがあります。たとえば2002年6月に発表された米国医師健康調査(ハーバード大学)は、2万1,454人の男性を平均17 年間追跡し、ナッツ類の食事摂取が突発性心臓死リスクの有意な抑制と関連することを示しました。1994 年にLancet に発表されたリヨン心臓試験では、血中に健康的な必須脂肪酸が存在すれば血栓や炎症が抑制され、動脈閉塞や突発性心臓発作のリスクが70 %低下することが判明しています。
n-3系脂肪酸が臨床的抑鬱の発症予防に有効であることを示す研究もあります。BiologicalPsychiatry(2005 年2 月)に発表された研究で、ハーバード大学付属マクリーン病院の研究チームはn-3系脂肪酸が「抗鬱剤と同様の効果がある」ことを確認しました。 |